「先生!しゃがみ式の便器(和便器)は足が疲れるし、腰掛け式の便器(洋便器)は他人のお尻が触った後で気持ち悪い。その中間の便器はありませんか?」
「難しい質問だね。君たちが外国へ行けば、いろいろなトイレを見ることができる。でも『しゃがむ』か『座る』かのどちらかのスタイルで、世界中あまり変わらないんだ。だから、両方とも使えるようにしておかないと、外国へ行った時にきっと困るでしょう……」
世田谷の小・中学校の子供達と、日本トイレ協会会長の西岡秀雄教授が、どんなトイレが良いかを話し合っていたときの一コマである。
大人が当たり前のように思っていた世界に、一石を投じる子供たちの興味と関心に、私は心の中で拍手喝采をした。
回答は子供の期待とは違う方向へ落ち着いた。が、私の頭の中は正座式便器とか、片膝式便器、あぐら式便器やぶら下がり式便器など、今までに思いもつかなかったような様々な便器が走馬灯のように巡り始めた。
そう、新事業が生まれる時の、あらゆる可能性を追求するあの瞬間≠ニ同じだ。
当社の創業時の柱となった『ピピダリア(小便器用尿石防止剤)』も、生まれたときは常識の世界を覆した。「男性の小便は便器に当たれば跳ねる」という常識を、である。小便の跳ね返りが便器やその周辺の床を汚す。そこに視点をおいたら、小便を吸収≠キる容器が生まれたのである。
しかも、その容器の中に薬剤を入れることによって尿石の発生を防ぎ、臭気や詰まり、汚れの防止も可能となった特許商品である。
今、商品が売れないと日本中が苦闘している。しかし、発想を変えれば、同じ商品も違った局面を見せるかもしれない。
子供のように、天真爛漫に柔軟な発想で課題を探せば、楽しいアイディアはいくらでも出てくる。悲壮な顔からは、決して突破口を開くビジネスは生まれない。
不況の今だから、新たなるビジネスチャンスが潜んでいる。 |