広島で創業した友人の会社が、今年三十周年を迎えた。
社長以下四人と軽トラック二台でのスタートだったそうだが、今は九州にも進出し、総勢五十人を抱える、堂々としたトイレブースの専門店である。
社名は株式会社△□○(ミヨマル)という。
世にも珍しい社名であるが、この社名に社長の壮大な夢が隠されている。「世の中の形の原型は△と□と○。これこそ宇宙そのものではないか!」というのが命名の理由だそうだ。
過日、第三十期の経営計画発表会と、三十周年記念感謝会に招待されたので、喜んで参加させていただいた。
当日の社長との会談は、私にとって非常に感慨深いものがあった。
「元氣こそ、我ら日本人のパワーです。 ”気”の字は〆るのではいけない。”氣”の字の米印が大事なのです」と主張されていたからだ。
なるほど確かに、農耕民族の日本人が主食とする米こそ、我々の元氣の元に違いない。この日は、米尽くしの話題となり、土産に米俵一俵を頂いて帰ってきた。
帰りの機中で読んだ新聞には、小泉総理大臣の訪朝が紙面を賑わしていた。北朝鮮の農作物は不作が続いており、米などの食糧事情は危機的な状況のようだ。
一方で、同じ紙面で、日中国交正常化三十周年の記念行事が、九月から十月にかけて行われる予定で、北京を舞台にさまざまな動きがある。日本からは百人を超える議員が訪中ラッシュとなるだろうとあった。
まさに、米が食えることの幸福を改めて感じた一日だった。そんな貴重な一日を送った私は、ある中国の女性詩人の言葉を思い出した。
「食って出す。それが人生だ。」
米は人間に”元氣”をつけてくれるばかりでなく、米の屍を屎と呼び、水の屍を尿と言うように、屎尿になってからも大地に恵みをもたらしてくれる。
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