今年も横浜で「トイレ診断士資格試験」を開催した。学科試験の最中には、四十名ほどのメンバーがひたすらぺンを走らせる姿があった。実技試験では、ユニフォームに身を包み、現場さながらの緊張感で取り組む姿が見られた。心して取り組まなければ合格は難しい。
そして、見事に合格の栄冠を勝ち得た「トイレ診断士」は、百貨店などの商業施設、医療・保健施設、工場・研究所、一般オフィス、飲食店など、様々な施設のトイレが活躍の場となるわけだ。
数多くの現場を担当しているトイレ診断士から常に情報が上がってくるが、「どんなにきれいに管理されているように見えても、九九%のトイレは問題を抱えている」そうだ。その原因の多くは、日常清掃や点検精度の荒さという小さな問題が積み重なって、大きな問題へと発展しているという。
なかでも、外食チェーンの店舗に問題が多い。衛生管理に厳しいはずの飲食店なのに、トイレに至っては無神経この上ないケースが多いというのだ。効き目のない「安物の芳香剤を置いておけばいい!」としている店が実に多く、根本的な問題解決をせずに「臭いモノに蓋」をしているだけの店が目に余る。
そうした店のオーナーに限って、予防型トイレメンテナンスのアメニティの活用を提案しても「トイレに経費をかけるつもりはない!」といった言葉が返ってくるのが相場だ。
急成長を遂げて話題となっているある商業施設が、トイレのメンテナンスに相当なエネルギーを投入している。その責任者A氏とトイレ診断士Yさんとのやり取りを再現する。
トイレ診断士Y「お客様用のトイレがいつもきれいに管理されていますね。これならお客様からのクレームはないでしょう」
A氏「お客様から見ていいトイレと評価されるのは嬉しいが、施設としては当たり前のこと。当社のトップはトイレの清潔さには強い思い入れがあり、私たちもトイレ環境で他施設に負けたくありません。トイレのプロであるトイレ診断士の目で、合格かどうかを診てほしい。トイレにかけるお金は ″経費″ではなく″投資″ですから」
トイレの維持管理コストが、経費削減の対象として筆頭に上げられているような飲食チェーンに明るい未来があるはずがない。
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